日頃、懇意にしてもらっている友人T氏から、お昼のお誘いがありました。
氏は金沢で所用があり、神戸に帰る際に山中温泉へ立ち寄ると言います。
なんでも山中温泉の料亭『明月楼』の鰻がとてもおいしいとの情報を得て是非とも行ってみたいとの事でした。
そこで同じ町に住む僕に同席の白羽の矢がたった訳です。
少々値は張りそうですが、友人とはいえ近年における僕の生き方の指針とさせて貰っている大切なお方。
断る理由などあるはずがありません。
という訳でT氏、ようこそようこそ山中温泉へ。
昨夜から降ったみぞれまじりの雪で、山中温泉はすっかり雪化粧をしています。
お店は名勝『こおろぎ橋』のたもとにあります。
建物は古いですがその古さが返って周りの景色と調和しています。
お店の中は奇麗に整えられていて深みを感じます。
華やかではないが美しい。
わび・さびの世界とはこの様な世界をいうのでしょうか?
おっと。ご注文ですね。
ぼーっとしてました。
お品書きをT氏に読んでもらい考えます。
うなぎまぶしが食べ易そうですが、散々迷った末、T氏と同じ『うな丼 (上)』を注文します。
ここへは法事で何度か招かれた事があります。
しかしその頃はまだ命には限りが存在するという事を理解していなかった為か、特に何も感じませんでした。
しかし今ではなにか感じるものがあります。
それをどういった言葉で表現するかは僕の今後の課題として…。
T氏曰く、壁紙の色が「群青色」なのは加賀藩前田家の流れを汲んだもので他県ではみられないそうです。
なるほど。言われてみれば鮮やかな群青色。
壁の色一つとっても深い意味合いがあるのですね。
そう言われるとここからすぐ近くにある、石川県指定文化財の加賀藩最高の武家書院といわれる『無限庵』にも行ってみたくなります。
はっ!またぼーっとしてました。
『うな丼 (上)』の到着です。
美味そう!いや美味いに決まっているな。
食べまーす。
「うん。」
「まいうー―――――!」
失礼。
鰻の皮はパリパリ中ジューシー。
つゆだくのタレにからまったごはんがまた絶妙!
最強です。
山中塗の渋みのある器も前に出過ぎずに優しくお味を引き立てています。
これ以上の言葉はいりません。
最高に美味しかったです!
帰り際、店主にお礼を言って店を出ます。
お店を出てすぐに架かる名勝『こおろぎ橋』を観光しているとT氏が前のカップルに撮影を頼まれています。
近寄ってみると女性の手には大きな花束が。
「新婚旅行ですか?」
「昨日プロポーズされました♡」
「おーっ。おめでと―――――!」
二人の未来に幸あれ!
一期一会の喜びにオサーン二人はニヤケつつ家路を急ぐのでした…。
料亭 明月楼
住所
石川県加賀市山中温泉下谷町ロ1-1
予約・お問い合わせ
0761-78-0103
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